公認会計士事務所における事業承継の大まかな流れ
- hirohayaoffice
- 2024年9月25日
- 読了時間: 6分
公認会計士業務の概要
1. 監査業務
財務諸表監査:
企業の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)について、その正確性と信頼性を確認し、外部の利害関係者に対して企業の財務状況や業績の透明性を保証します。
内部統制監査:
企業の内部統制システムが適切に機能しているかを評価し、経営者や監査役、投資家などにその結果を報告します。
法定監査:
法律で義務付けられている企業の監査を行います。特定の規模や条件を満たす企業は、毎年の財務諸表について法定監査を受ける必要があります。
2. 税務業務
税務申告書の作成:
法人税、所得税、消費税などの税務申告書の作成を行い、クライアントの税務コンプライアンスを支援します。
税務相談・税務戦略の策定:
税制の変更や特例制度などを活用し、クライアントの税負担を最適化するためのアドバイスを提供します。
税務調査対応:
税務調査の際にクライアントを代行して対応し、必要な情報を税務当局に提供します。
3. コンサルティング業務
経営コンサルティング:
事業計画の策定、コスト削減、資金調達など経営全般に関するアドバイスを行います。
M&A(企業買収・合併)アドバイザリー:
企業の買収や合併の際に、デューデリジェンス(企業調査)、企業価値評価、財務構造の再編などを支援します。
事業承継コンサルティング:
事業承継の際の税務対策や後継者育成、企業の継続的発展のためのアドバイスを行います。
4. 会計業務
会計帳簿の作成および管理:
日々の取引を記録し、会計帳簿を作成・管理する業務を行います。企業の経営判断に役立つ正確な財務情報を提供します。
財務諸表の作成:
企業の活動を財務諸表としてまとめ、経営者や外部ステークホルダーに対して情報提供を行います。
管理会計支援:
経営の意思決定をサポートするための内部報告(例えば、部門別損益計算、予算管理など)を行います。
5. 内部監査・内部統制支援
内部監査の実施:
企業内部の業務プロセスや内部統制の適切性を評価し、改善点を提案します。
内部統制構築の支援:
経営者が企業のリスクを適切に管理するための内部統制システムの設計、導入をサポートします。
6. その他の業務
金融商品取引法に基づく業務:
金融商品取引法に基づく財務報告や開示書類の作成支援、監査を行います。
国際業務:
国際会計基準(IFRS)や国際税務に関するアドバイス、海外進出企業の支援を行います。
CSR/ESGコンサルティング:
企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する戦略策定や情報開示の支援を行います。
公認会計士は、企業の健全な経営を支え、社会全体の信頼性の向上に寄与する重要な役割を担っています。それぞれの分野で高度な専門知識と倫理観が求められる職業です。

公認会計士における事業承継のおおまかな流れ
1. 事業承継の計画策定
現状分析と目標設定:
事務所の経営状況、クライアントの分布、従業員のスキルや役割などを分析し、事業承継の目的(例えば、事務所の成長、クライアントの継続的サポートなど)を設定します。
後継者の選定:
事務所内部の公認会計士、親族、もしくは外部からの人材を候補とし、適切な後継者を選びます。選定にあたっては、専門知識だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力も考慮します。
2. 承継方法の決定
内部承継:
事務所内部のパートナーやシニアアソシエイトに事業を引き継ぐ。株式譲渡やパートナーシップ契約の締結などの方法で進めます。
外部承継:
外部の会計士や他の会計事務所と統合、または売却することで事業を引き継ぐ。特に、事業規模の拡大や新たな顧客基盤の確保を目指す場合に用いられます。
親族承継:
親族が公認会計士である場合、親族内で事務所を引き継ぐ方法。後継者育成や承継プロセスの透明性を確保することが重要です。
3. 具体的な承継計画の策定
契約書作成:
株式譲渡契約、パートナーシップ契約、業務引き継ぎ契約など、法的な準備を行います。事業承継に関する合意を明確にし、後のトラブルを防止します。
資産と負債の整理:
事務所の資産、負債、契約などの状況を確認し、後継者への引き継ぎ方を整理します。税務面や法的なリスクも考慮します。
税務対策:
承継に伴う税務負担(例えば、相続税や贈与税)を軽減するための対策を行います。これには、税務アドバイザーのサポートを受けることが推奨されます。
4. 後継者の育成と引き継ぎ
業務の引き継ぎ:
クライアント対応、財務諸表の監査手法、税務相談の方法など、実務に関する知識とノウハウを後継者に引き継ぎます。重要なクライアントについては、後継者を紹介し、信頼関係の構築を図ります。
経営の引き継ぎ:
事務所の経営方針、事業戦略、従業員管理の方法など、経営に関する全般的な知識を後継者に伝えます。事務所の運営方針についても合意を得ることが重要です。
ブランドと信用の引き継ぎ:
事務所名、ブランド、クライアントとの信頼関係を引き継ぐため、内部および外部への周知を行います。事務所の価値を維持しながら、スムーズな移行を目指します。
5. 承継の完了とフォローアップ
法的手続きの完了:
株式譲渡や役員変更の登記、税務署などへの届け出を行い、名義変更や経営者交代の法的手続きを完了させます。
アフターフォロー:
承継後も前任者が後継者をサポートし、クライアント対応や業務運営についてのアドバイスを行います。これにより、クライアントの信頼を維持し、事務所の安定運営を図ります。
6. クライアントおよび関係者への告知
クライアントへの周知:
重要なクライアントに対して、事業承継の事実と後継者を直接紹介し、引き続きの支援を依頼します。クライアントとの関係性維持に努めます。
関係者への告知:
税務当局、取引先、金融機関など、事務所の取引先に事業承継の事実を伝え、スムーズな移行を図ります。
7. 事務所の体制強化と発展
新体制の構築:
承継後、新体制を確立し、事務所の運営方針や戦略を再評価・再構築します。事業の持続的発展を目指して、新しいビジネスチャンスの模索や、組織の強化を図ります。
公認会計士事務所の事業承継は、専門性の高い業務やクライアントとの信頼関係が重要であり、計画的かつ慎重に進める必要があります。専門家のアドバイスを受けながら、事務所の特性に合った方法で実施することが望ましいです。